令和6年度 3月定例議会 町長行政報告
令和6年度 3月定例議会 町長行政報告
みなさん おはようございます。
本年は穏やかな新年の初めになりましたが、2月には今期最大最長の大寒波に見舞われ、豪雪地帯の大変さをニュースで拝見することになりました。
本日は令和7年第1回定例議会を招集いたしましたところ、全員の出席をいただき誠にありがとうございます。
まず初めに、2月19日に開催された愛媛県町村議会議長会定期総会において、前田議長が愛媛県町村議長会会長に選任されましたことをお喜び申し上げます。
今後、前田愛媛県町村議会議長会長におかれましては、上島町の議会運営のみならず愛媛県内町議会を先導していただく事を祈念しております。
それでは、行政報告として昨年12月定例議会後の主な事項のみを報告させていただきます。
12月24日、国に対し離島振興関係予算確保に関する要望運動を行いました。
離島関係自治体首長等が9班に分かれ、私は2班の班長として衆参議員に陳情を行い、9班合計で約250ヶ所を回りました。これは10月の活動内容と同様、令和7年度国家予算の編成にあたり、離島の実情と離島の果たす国家的国民的役割を十分に賢察して頂き、関係事業予算の確保につき特段の配慮を求めたものです。
陳情前には、国土交通省の令和7年度離島振興関係政府予算について、国土政策局離島振興課長や海事局内航課長などから概要説明を受け、上島町に該当する予算については資料と共に上島町担当課に提供しています。
12月26日、消防団年末警戒出発式、1月3日には二十歳を祝う会、1月4日村上誠一郎総務大臣国政報告会、1月6日には松山での年賀交換会へ出席しました。6日から7日にかけては、愛媛県庁や東予地方局・今治支局並びに四国地方整備局・運輸局・財務局等に挨拶回りを行い、本年1年間の要望や協力要請とともに、今後の上島行政に活かせる新たな情報を頂き協議を重ねてまいりました。
1月6日午前中の全体課長会においては、残り3ヶ月でやり残す事のないよう、引き継ぎ事項があっても町民や後任者に迷惑をかけないよう、令和6年度施策の確実な実施を指示しました。
また、1月7日の因島地区新年互礼会での尾道市長挨拶の中に、因島総合病院の跡地活用に責任を持って取り組むとのご発言がありましたので、安心と共に希望と心強さを感じました。
1月14日から16日にかけて上京し、各省庁や議員会館等へ昨年の御礼と上島町の重点施策に対する陳情を実施してまいりました。
新年度に向けての地方創生や自治体DXの推進、二地域居住を含む観光交流施策等、多くの情報を得ることができましたので、上島町担当課と共有し今後の施策に活かしてまいります。
1月17日から18日にかけて国土交通省黒田国土政策局長や駒田離島振興課他2名の上島町視察がありました。
今回は、岩城橋、ゆめしま寮、さざなみ寮等上島町の新しい施設、海の駅、魚島海水淡水化装置、魚島国保診療所、救急艇等、上島町に無くてはならない施設を現場視察していただくとともに、海苔業者、柑橘業者、移住者、離島留学生等様々な町民と面談していただき、行政目線だけでなく、町民目線での上島町の取り組みや魅力、上島町の現状や課題を知っていただける良い機会になりました。
黒田局長からは、「上島町にしかない、上島町でしかできない魅力を発信し、交流を生み、上島町への流れを作っていかなければならない。」とのアドバイスもあったことから、町の様々な分野において、国の新しい交付金等の支援を活用し、戦略的なまちづくりをしていく必要がある事を再認識致しました。
1月21日には、「一般社団法人水産土木建設技術センター」と漁港等の施設の災害復旧支援に関する協定締結式を執り行いました。これは、漁港施設などにおける、地震や台風など災害時の迅速な復旧につなげるためです。
同日、愛媛県教育委員会から「2025年度県立高校入試特色入学者選抜志願者数」が発表されました。愛媛県全体の志願倍率が約1.6倍に対し、弓削高校は約1.9倍との結果となり、学生寮の整備や公営塾の設置等「高校魅力化」の積み上げがこうした結果の要因の一つになったものと思われます。
特に町外からの留学制度は県内でも高い人気を継続しており、今後も受け入れ態勢の強化が必要であると考えています。
1月22日、「自由民主党過疎対策特別委員会 愛媛県過疎関係者との意見交換会」が松山で開催され、委員長である谷公一衆議院議員、事務局長である長谷川淳二衆議院議員、総務省過疎対策室の山口研悟室長らの出席がありました。
上島町からは、生活基盤を守り、持続可能な町づくりを実現するため、「国による総合的な財政支援の拡充・強化」「都市から地方への移住促進策のさらなる強化」「給食費も含めた保育料の完全無償化など、地方で働きながら子育てがしやすい環境づくり」の支援要望を行いました。
また、同日開催された中村時広新春の集い2025へも出席し、知事の新年の方針を確認してまいりました。
1月28日には、関東愛媛県人会新年賀詞交換会に参加し、日本の首都で活躍されている皆さんと名刺交換などを行い、移住や二地域居住・ワーケーション・地方創生へのお願いもしてまいりました。
1月30日の臨時議会では、一般会計補正予算等3議案を可決していただきました。
中でも補正予算では、国から交付された「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」を活用し、物価高騰による負担感が大きく生活が困窮に陥っている低所得者世帯を支援するための現金給付、全ての町民を支援するための5千円の生活応援商品券配布、更には家電の電気料金の負担軽減をするための省エネ家電買い替え支援予算を提案しました。
残念ながら満場一致の賛成とはなりませんでしたが、上島町としては町民の皆様の日々の生活に役立てていただけるものと確信しています。
1月30日、中村知事により自転車の国際会議「Velo-city」が日本で初めて2027年の5月、松山市で開催されるとの新聞報道がありました。
「Velo-city」とは、欧州サイクリスト連盟が主催しており、世界60カ国以上から1500人近くの自転車愛好家らが参加する世界最大規模の国際会議(サミット)です。記者会見での中村知事は、「市町一丸となり、県内経済の活性化に結び付けたい。」と述べられており、ゆめしま海道を有する上島町としても、アフターVelo-cityに期待しつつ、上島町独特の「おもてなしの心」を持って参加・協力したいと考えております。
また、中村知事は1月31日、湯崎広島県知事と本州四国連絡高速道路の後藤社長との瀬戸内しまなみ海道沿線の活性化策についてのオンライン会議で、「ゆめしま海道への誘客を巡り、観光客の受け入れ環境整備の取り組みを紹介した上で、サイクリングとマリンスポーツを組み合わせ、より楽しんでもらえるようにしたい。」と述べられました。これに対して湯崎知事も広島側でE-BIKEのレンタルサービスや民間のガイドツアーが展開されている点を挙げ、ゆめしま海道との交流連携に意欲を表明していただきました。
中村知事においては昨年に引き続いて、湯崎知事においては初めての「ゆめしま海道」についての言及は、ゆめしま海道にサイクリングを生かした観光コンテンツ開発が必要であり、そのポテンシャルも十分にあるということの表れですので、上島町もこれを受けてしっかり取り組まなければならないと考えています。
2月2日には海苔共同加工施設建築工事起工式に議長とともにお招きいただき、愛媛県漁業協同組合代表理事等関係者と工事の安全を祈願するとともに協議を重ねました。
ご案内のように、今期の海苔生育状況及び入札価格はすこぶる好調で、まだ途中経過ですが、売り上げは既に昨年の総額約2億円から約5億円と倍以上の成果を上げており、この実績は過去最高を示しています。
この海苔加工場の建築に関しては、昨年12月定例議会において、一部議員さんから「新たな事業は必要か」「海苔は年々減り続けている、大金を投入するのは適当なのか」などの否定的な意見もありましたが、「若者の情熱と挑戦」「専門業者による決断」、それを支える「地域や町民代表の客観的判断」が重要であることを再認識いたしました。
2月9日、岩城小学校創立150周年記念式典に出席しました。
岩城小学校は、私塾の「知新館」が明治7年の学制施行に伴い、村立の「知新小学校」として歩みを始めました。数多くの卒業生は、上島町の基幹産業である造船業をはじめとした商工業、青いレモンを代表とする柑橘栽培などの農業、また、町外では関西岩城会を構成する方々の活躍など、各分野で社会に貢献されてきました。
何よりも素晴らしいのは、今回の記念式典も町ではなく地元有志の実行委員会が主催であり、岩城には自主自立の精神が脈々と引き継がれているということではないでしょうか。
2月12日には、全離島正副会長会・理事会に出席し、令和7年度事業計画の承認を行いました。その後、国土交通省離島振興課駒田課長より、「令和7年度離島振興関係予算」「二地域居住の促進に向けた取り組み」「新しい地方経済・生活環境創生交付金について」「国土強靭化について」などの説明を受けました。
この内容については、上島町の将来にとって重要な案件ばかりですので、資料とともに担当課に提供をし施策提案の指示をしています。
続いての2月13日、離島センター理事会・スマートアイランドEXPOに出席し、出店企業との名刺交換や協議を行いました。
2月19日には愛媛県・市町連携推進本部会議に出席し、中村知事をはじめ県幹部出席のもと、チーム愛媛としての「人口減少対策」「防災・減災対策」「地域経済の活性化」「デジタル技術の活用」など19項目の新規連携施策についての議論を交わしました。
2月21日、新たに誕生した「イワキテック硬式野球部」の弓削庁舎訪問がありました。このチームは県内でわずか2つ目の社会人野球への参入硬式野球部であり、ましてや島に社会人硬式野球部ができたことは信じられないほどのニュースです。
上島町は現在まで、宿舎や練習場の確保などにおいての協力をしておりますが、今後は「町民球団」として応援をしてまいりたいと考えておりますので、町民の皆様のご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。
次に、上島町の令和7年度の当初予算についてですが、来年度も人件費の増加や物価高騰による影響を大きく受ける状況になっています。
その編成に当たっては、将来的な人口減少対策を進めながら、交流や観光、DX(デジタル・トランスフォーメーション)や地方創生など、新たな行政課題への対応や将来に渡って持続可能なまちづくりに向けた取組みを行う必要があります。
これらを踏まえ、上島町の一般会計当初予算の総額は74億4,700万円と、前年度に比較して1億1,500万円、1.6%の増となりました。
特別会計と企業会計を含めた町全体の予算総額については、115億9,600万と、前年度に比較して6,700万円、0.6%の増となりました。
歳入では、歳入総額の約5割を占める地方交付税が、国の地方財政対策及び前年度実績から35億5,900万円で前年度比2億3,300万円、7.0%増と見込みました。
一方歳出では、人件費、扶助費、公債費を合わせた義務的経費が、30億5,800万円で、前年度比600万円、0.2%の増となりました。公債費については、減少傾向にありますが、人件費については、職員数は減少したものの、人事院勧告に伴う給与改定の影響等により増額となったことによります。
新規及び重点事業としては、
◎対象地域住民の移動手段の確保と、交通利便性の向上を図る『デマンド交通導入事業』
◎子育て支援策として、年齢、所得などに関わらず、全ての子どもを対象に保育料を無償化とする『保育料無償化事業』
◎人口減少対策として、愛媛県と連携し各種事業に取り組む『えひめ人口減少対策総合交付金事業』
◎長寿命化計画に基づき、ごみ処理施設の更新を行うことにより、施設の延命化を図る『上島クリーンセンター基幹的設備改良事業』
◎上島町唯一の県立高等学校である弓削高等学校の存続へ向け、県外からの留学生を確保するための『弓削高等学校学生寮運営事業』
◎魚島小中学校の存続、及び地域の活性化を図るための『魚島離島留学事業』
などを提案しています。
このように、上島町が将来にわたって持続可能な行政運営を行っていくため、「先憂後楽」と「アイランド オブ ドリームス」の精神を忘れず、今後も更なる行財政改革を推進するとともに、新たな財源の確保、事業の見直し、公共施設の統廃合などに取り組んで参ります。
結びに、今年は戦後80年、そして昭和の元号で100年に当たる節目の年であり、これまでの上島町の歩みを振り返り、これからの新しい上島町を考える年にしなければならないと考えています。
その節目の年に、脳科学者として有名な茂木健一郎先生の講演を聞かせていただく機会がありました。
初めは先生が専門とする人工知能の話であり、「AIにより人間の仕事が奪われるのではないかとの意見があるが、日本は悪いポジションではない。日本人はシステムを作るのは得意ではないが、人間的なペーストを乗せるのは得意である。」という内容でした。
しかし、私たちに熱弁されたのは、「将来人間は人工知能に置き換えられる」ということではなく、「何のために生きているのか」という人間力の大切さでした。
「人間は『生きがい』のため働いており、人工知能には『生きがい』はない。今、AIの世界でも『生きがい』が注目されている。『生きがい』とは他人から
の評価ではなく、自分のための喜びである。」という言葉に、長年感じてきた疑問の答えを明確に見つけることができました。
私の『生きがい』は「みんなを笑顔にすること」であり、政治家としての苦労の必然性も目から鱗が落ちるように見えてきました。
今後も上島町民のため、私の『生きがい』を追求してまいりますので、町民の皆様の変わらぬご理解とご協力をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
上島町長 上村俊之